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笑い話
第一章
これは喜劇です。喜劇として、読んでください。
自己紹介をします。大学院生です。ドクターです。今年で二十七になります。
居酒屋で、「にいちゃんは背も高くて、手もこんなにゴツゴツしてるのに、女の色気がある」と絡まれたことがあります。その時の私は、嬉しくも不快でもありませんでした。ただ、いやに二元論的な言い方をする人だと思いました。(二元論的というのは、性別の話です。)他の複数の人々にも同じような目を向けられたので、その指摘は、あながち間違っていないのだと思います。
私には誰にも言えない秘密があります。それは、死にたいということです。ありふれた悩みです。秘密という言葉が持つ甘美な響きを、一瞬で吹き飛ばすくらい、あまりにもありふれた、つまらない悩みです。
私が死にたくなった理由はわかりません。ただ、いつだったか、世界がパッと明るくなって、それから、急速に堕ちていきました。「命がだいじ」というフレーズが意味を失ったのも、いつからだったかわかりません。少なくとも中学の頃は、幼い逆張りの精神から反発していたように思います。ですが、いつからか、そのフレーズは、本当に、色を失ってしまいました。
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