ジャック
- tachikawa176
- 2023年6月20日
- 読了時間: 10分
更新日:2023年6月26日
かわいいですよね。
個人的に友達になりたいキャラクターNo.1です。正確には友達になりたいというより、ひたすらうざ絡みしたいキャラクターNo.1です。効率的にうざ絡みするには友達になるのが一番なので友達になりたいです。うざ絡みされた彼がどのような反応をするのか興味があります。

彼は私の「好き」を詰め込んで作られたキャラクターです。真っ黒なスーツ、セクシーですよね。表情の見えない無機物の頭部、セクシーですよね。高い身長と細長い手足、セクシーですよね。丁寧な敬語、セクシーですよね。穏やかな物腰、セクシーですよね。初対面時に得体の知れなさを出してくるの、セクシーですよね。何かに一生懸命なところ(彼の場合は研究ですね)、セクシーですよね。割と良識があるところ、セクシーですよね。大人びているように見えて「子供っぽさ」と「抜け」があるところ(対サミュエルでちょいちょい見られます)、セクシーですよね。それから、これはドットでは表現できなかったのですが、彼は白い手袋をつけています。(後出し情報で恐縮ですが非常に重要なポイントです。)白い手袋、セクシーですよね。結果として、とてもかわいいキャラクターになったと思います。過ぎたるセクシーはかわいいに転じます。
また彼に関しては、私の中で話し方のイメージも定まっています。「ボンドルドの声をした胡蝶しのぶさん」です。喋るスピードや抑揚の付け方の話です。あくまで表面的な部分の話ですが、これ、最強にかわいいと思いませんか?私はかわいいと思います。
ジャックは私にとって一番動かしやすいキャラクターでした。私にとって一番わかりやすいキャラクターだったからです。
というのも、製作当時私は大学院生をやっており、自分で言うのもなんですが研究もかなり熱心かつ楽しみながら取り組んでいました。(研究に比重を置きつつ、研究の息抜きにゲーム制作、ゲーム制作の息抜きに研究、という生活サイクルでした。)そのため、研究を主軸に生活しており、かつ研究を楽しんでいる点でジャックと共通していました。「研究を楽しむ人」に対する共感度が非常に高かったんですね。
また、同じ研究者キャラでも、ブルックリンやサミュエルはキャリア長めで余裕のようなものが感じられるのですが、それと比較するとジャックはやや前のめり気味です。謎に無茶します。研究者としては若いです。そこまでベテランなわけではありません。「ザ・大人」な振る舞いはしますし、実際ブレイクやカレンたちと比べれば遥かに大人ですが、サミュエルやブルックリンの前では赤ちゃんです。その未熟性にも勝手に親近感のようなものを感じていました。
そんな諸々もあり、ジャックの研究に対するスタンス及び、研究する者としての世の中への関わり方や視点は、自分の持っているものとかなり近いものがありました。(本格的に研究を生業にしている人とペーペーの大学院生では色々と違うでしょうが、まあそこは…大目に見てください。)私にはジャックほどの研究能力も社会的地位もないので流石に全て同じとはいきませんが、少なくとも行動原理はそこそこ深く理解していたつもりなので、そういう意味で非常に動かしやすかったと記憶しています。
ジャックの好きなところは、「無邪気さ」と「良識」のバランスです。彼は少しだけマッドに寄ったサイエンティストなので当然ある種の無邪気さというか純粋さ、あるいは常識の影響を無効化する技術を持っているのですが、自分の研究のためなら他はどうでもいいというわけではありません。人工太陽の悪影響がラボの外に及ばないよう最大限気を使っていたり、カレンのことは保護者としてしっかり気にかけていたり、ちゃんと良識のある大人の振る舞いをします。
研究を優先するあまりに反社会的な行動をとることはまずありません。ルールから外れたことをしたければ、まず最初にルールに則ったやり方でルールの方を拡大させます。そして、やりたいことがルールの射程内に収まってから、初めてやりたいことに手をつけます。ちゃんと段階を踏むんですね。では、もしルールを変えられなかったら?その時は別のアプローチを考えます。(「ルールの穴をつく」ような、こすいアプローチはしないと思います。それはそれで面倒なので。)あるいは潔く諦めるかもしれません。
ジャックは基本的に善人です。あるいは、善人でありたいと思っています。そのために彼は「枠」を大事にします。この「枠」は既存のルールであったり、良識的な大人像(良識ある大人はこれをする/しないだろうという仮定)であったりしますが、まずそれを自分の中で定めてから、その枠を外れないように行動します。そうすることで、「善人であることを損なわずに自分のやりたいことをやる」を実現します。(彼の場合「やりたいこと」の範囲が非常に広いので、こうした工夫が必要になります。)枠を善の道から外れないためのセーフティロックとして機能させるわけです。といっても、「良識的な大人像」はあくまでジャックの基準で決められますし、枠を決めたとしても、彼はそのギリギリを攻めていくのですが。(ここで「常識的な大人」ではなく「良識的な大人」を目指しているのがポイントです。)
あと、この枠云々に関して彼は、多少はみ出たとしても足し引き算でゼロになればはみ出たことにはならないからオーケーだとも考えています。「食べすぎてカロリーオーバーしちゃったけど、次の日抑えめにして調整したりたくさん運動したりすればチャラだよね!」と全く同じです。主人公達を勝手に実験に使ったけど、先に侵入してきたのはそっちだからプラマイゼロだよね。遺物の腕を勝手に持ち出したけど、ちゃんと謝るし元に戻すからプラマイゼロだよね。だから自分は善人として何も問題ないよね、といった具合です。このあたりの考え方を良しとするかどうかは、人によってだいぶ分かれると思います。

また、先ほどの「善人」の話とも繋がるのですが、彼の行動は利他の精神がベースにあります。これも私の気に入っているポイントです。
作中で登場した彼の研究は、人工的に春を作ることで、寒さで困っている村の人々を助けたいということが動機になっています。人工太陽を手に入れたのも、
・エネルギーがあればラボメンバーみんなの研究が捗る
→研究が捗ることはラボのみんなにとって幸せである
→なぜなら研究は楽しいことだから
・研究が進めば村はもっと豊かで快適になり幸せになる
・研究を進めることは世界の知に貢献し、間接的に世界の人々を助けることになる
と信じているからです。さらに言うと、泉や太陽を「独占する」という形を取ったのは、自分の研究所で管理することが最も「安全」であると考えたからです。これも周りへの思いやりがベースにあります。カレンの手術をしたのも、純粋にカレンを助けたいからです。
外からは非常にわかりにくいですが、彼は人助けが好きです。ただ、若干の(いや、かなりの?)独善感はあります。人を助けたいという気持ちの強さと実際に周りから善人として認識される度合いは、相関はあるかもしれませんが、必ずしもイコールではないと思います。ジャックはその辺りの感覚についてややズレがあるので、もっと周りとコミュニケーションを取るべきですね。サミュエルはジャックファーストなところがあるので、できれば彼以外とたくさん話すべきだと思います。(ちなみにサミュエルは、ジャックの歳上の部下にあたります。)


関係ないですが、サミュエル、いいですよね。
フランクで面倒見が良くて、話しかけやすくて頼れる存在で、(ジャックと違って)変なことしない、みんなに好かれる組織の潤滑油です。飲み会に頻繁に誘われます。積極的にサラダとか取り分けるタイプです。先輩にも可愛がられるタイプでしょう。子供にも懐かれます。マリカーとかもノリノリで付き合ってあげます。で、ちゃんと接待プレーします。大袈裟に悔しがるポーズをしながら子供に勝たせてあげます。すべて自然体でやります。すごいです。
私自身はサミュエルのような人がいたら萎縮してしまうと思います。「うわ〜〜〜!!!出来た人間だ!!!完璧人間だ!!!怖いよ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」と思い過ぎてしまうので、話しかけられたら挙動不審になると思います。ものすごく憧れるけど絶対になれそうにない存在、できれば近寄りたくない存在です。

ジャックの話に戻ります。
これは製作過程で消滅した設定ですが、初期の頃、彼は怪談をモチーフに作っていました。そして、彼とは元々戦う予定でした。ラボでは謎の四角の物体と戦うことになりますが、あの攻撃魔法とBGMは元々ジャックのものでした。

まず、彼自身はスレンダーマンを思い浮かべながら作りました。細い長身の男性、という特徴に反映されていると思います。(のちにグリアやサミュエル、アナベラといったより長身の存在が出てくるのですが…)黒いスーツは喪服のイメージです。葬儀屋さんのイメージと言った方がいいかもしれません。ジャックという名前はジャック・オ・ランタンからとりました。そして、攻撃魔法はそれぞれくねくね、人魂、貞子的な幽霊を表しています。さらに言うと、この貞子的幽霊はジャックの顔からこう…ぬるっと出てくる予定でした。ジャックの顔がテレビなのはそういった設定があってのことです。(この貞子的幽霊についても、ジャックの友人であるとか分身であるとか色々考えていました。)BGMはラップ音、お経のイメージです。木魚とお寺の鐘らしき音も入っています。やや和寄りの和洋折衷めちゃくちゃ怪談人間になる予定でした。
怪談を取り入れようと思った理由はシンプルで、科学第一のような人間がオカルトという非科学のモチーフを纏うことに色気を感じたからです。「死」の空気を纏うことそのものがセクシーである、という考えもあった気がします。しかし怪談要素がバトルの中に寄っているので、戦わないことが決まった時点でジャックの中の怪談要素は一気に消えていきました。今となってはいい思い出です。
また、ジャックにはトランスジェンダー(FtM)であるという設定がありますが(ペールヴィレッジのショップでのセリフ一瞬だけ&ダルヴィレッジの家の本棚での匂わせ程度しか出てきませんが…)こちらに関しては、かなり初期の段階からそうしようと決めていました。

ただ、FtMという設定を作ったはいいものの、とにかく登場させられない!というのが製作中の悩みで、これに関しては今もどうすればよかったのかわかっていません。
他の人に言わせるのはアウティングだから絶対にやりたくない。この土地においてクィアであることは自然なことだから、わざわざそこにフォーカスしたイベントを作るのは不自然な気がする。そうでなくとも、ジャックの場合は移行してから時間が経っており、かつ自分の話を積極的にするタイプではないので尚のこと話題にしづらい。しかし黙っていたらシスジェンダーだと見なされてしまう…いっそのことジャックの性格を大幅に変えてしまうか?あるいは別のキャラクターにトランスジェンダーの属性を付与するか?しかし、ジャックのような「一見性別の悩みから遠そうに見える」キャラクターがトランスジェンダーであることに意味がある…ジェンダーアイデンティティは重要だが、ジェンダーは社会の圧力由来のアイデンティティでもあるから、それとは別に自分で選び取った「科学者」というアイデンティティを全面に押し出したキャラクターにしたい…だからジャック自身は変えたくない…
そういった気持ちから苦し紛れにあの控えめな描写が出てきたわけですが、作り終えた今も「なんだかな」の気持ちがあります。もうちょっとうまいやりようがあったのではないかな、と。そんな気持ちから、この言い訳じみた思い出解説文を書いている次第です。
ジャックがトランスであることは展開上意味がありませんが、作品としてはそこにこそ意味があります。そんなわけで、地味ながらも非常に重要な設定です。
と、こんな感じで、最初は「シンプルなマッドサイエンティスト!」で終わらせようと思っていたキャラクターですが、気がついたら妙に思考の解像度が高くなっており、かつ言うほどマッドでもないサイエンティストになっていました。当初の予定からは変わりましたが、作っていても動かしていても楽しかった、思い出深いキャラクターです。

【追記】
はじめの方で「ボンドルドの声をした胡蝶しのぶさん」と書きましたが、この設定はジャックがシスジェンダーの男性だったとしても絶対に揺らぎません。なぜならかわいいからです。よろしくお願いします。